動く、話す、見る、聞くなど、ヒトにはさまざまな機能が備わっています。特に筋肉は、トレーニングすればするほど大きく強く鍛えられます。では、仕事での能力はどうか?腕立て伏せをすれば営業ができるようになるでしょうか。答えは、ノーです。少し胸板は厚くなるかもしれませんが、それだけで仕事の能力向上には繋がりにくいでしょう。営業には、営業のためのトレーニングというものがあります。その一つが、ロールプレイング研修というものです。これを実践することで、仕事のスキル向上に繋がるのですが、いったいどのようなものなのでしょうか。ロールプレイング研修会議、スタートです。

問題は現場で起きているんだっ!でも現場にいきなり出るのはちょっと…そんなときはロールプレイング研修

新社会人が就職して、上司から「ハイ、明日○○会社と商談してきて」と指示されて、果たして仕事を全うできるでしょうか。まず、無理でしょうね。そもそも、新人にそのような重要な仕事を丸投げするというような会社も少ないはずです。入職当初は、誰でも覚えればできる簡単な雑務など、無難な作業をしていたという方がほとんどではないでしょうか。
ある程度雑務をこなして仕事の流れに適応してきた頃に、クライアントとのやりとりなど対外的な業務に少しずつ参加していくことになります。しかし、対外的なやりとりにはマニュアルでは通用しない部分があります。他者とのコミュニケーションは流動的な要素が強いため、通り一遍な文句を覚えて言うというような機械的な対応が通用しにくいのです。営業は個人差がつきやすいスキルといえます。
そんな営業力を鍛えるために有用なのが、ロールプレイング研修です。これは、不測の事態が多い対人コミュニケーションスキルなど、総合的な営業力を鍛え上げるための取り組みです。

どう進めるの?ロールプレイング研修の流れ

営業力の養成にロールプレイングは役に立ちます。では、どのようにロールプレイング研修をするのでしょうか。ロールプレイング研修で重要なのは、具体的なケースです。商談であれば、どういった顧客でどのようなニーズ、要望があり、それにどう対応していくかといった細かい設定が必要です。いわゆる、ケーススタディですね。ケーススタディを、寸劇のように役割分担して行うのです。医療業界などでは、患者に対してサービスを提供する準備として、実際のサービスを模したリハーサルを行います。サービス提供者と患者に分かれて、それぞれの役になりきってシミュレーションしていきます。その際、修正すべき点などがあれば周囲のスタッフから指導を受けることができます。
流れをおおまかに整理すると、「状況・役柄設定→リハーサル→フィードバック」となります。

こんなダメ出しはNG!みんなが活発に意見を交えやすい空気をつくろう!

ロールプレイング研修となると、さまざまな視点で自分のパフォーマンスをチェックしてもらえるという利点があります。同じことをしても、Aさんが感じる問題点とBさんが感じる問題点には多少なりとも違いがあるものです。ただ、ロールプレイングを実践するにあたって気をつけるべき点があります。それは、指摘の仕方です。あるテーマに対して実演した際、それについて長々とダメ出しをする人がいますが、そのような指摘の仕方では、指摘を受けている本人はもちろん周囲も委縮してしまい、ロールプレイングについて消極的になってしまいます。「あの人にダメ出しされる」、「何をしても否定される」そんな空気が蔓延しているロールプレイング研修は、すでに失敗しているといっても過言ではないでしょう。演者は、それなりに緊張するでしょうし、自分の仕事スキルを周りにさらけ出すのは、それだけでかなりのプレッシャーを感じるものです。一生懸命アウトプットしたものが、さも簡単にないがしろにされる。それはその人自身を全否定することにも繋がるのです。
指摘や意見交換は、否定のみまたは否定前提で論を展開していくことは避けた方がよいでしょう。まず、その人の努力を認めることがいいロールプレイング研修を進めていくコツです。

しっかり復習!みんなのアドバイスでスキルアップ

ロールプレイング研修は、その場だけ演じて終わりというものでは本当の効果は得られません。大事なのは、ロールプレイングが終わってから。研修を通じてさまざまなアドバイスや、別の視点からの考え方などが実感できることでしょう。それを、普段の業務に落とし込む努力をしていくことが肝要です。研修のときだけ張り切って、仕事の質が上がらないというのでは何のための研修なのかわかりませんよね。研修をきっかけにして新たな分野に挑戦したり、日々の仕事に工夫を加えたりとどこまで応用させていくのかで、ロールプレイング研修の効果が決まります。一人の偏った見方ではなく、時には周囲の仕事ぶりを参考にすることも必要です。ロールプレイング研修後は、しっかり内容を復習して次の仕事にどう活かしていくかを積極的に考えていきましょう。

ロールプレイング研修で身に付くシミュレーション力!百見は一行にしかず

営業は、予想外の事態に迅速に対応できる瞬発力など流動的な状況判断・対応力が求められます。ある程度センスも必要かもしれませんが、その多くは努力で補うことが可能です。素早い判断や対応をするためには、経験値を積むことが一番です。「あの時はこうだったから、今回はこうだ」みたいに、ケースごとに対応できるようになるのです。そのような能力を、シミュレーション力といいます。状況を判断する前に、予測しておくことで判断のスピードを上げるのです。ロールプレイング研修では、より実践に近いシミュレーションを行います。しっかり練習することで、一人でも万全のシミュレーションができるようになっていきます。百見るより、一を行う。百行えば、技が身に付きます。百見は一行にしかずとでもいいましょうか。繰り返して、仕事ができるサラリーマンを目指しましょう。