営業の仕事はクライアントに直接会って契約をまとめることが主な役割です。クライアントとの交渉は、相手先に出向いて行うのがビジネスの基本です。そのため、接待や移動などにさまざまな費用が発生します。では、営業職が仕事で使う費用はどこまで営業経費として落とせるのでしょうか。常識的に考えて経費で落とせるはずの費用でも、手続きを怠ると自費で処理しなければならない場合があります。注意事項も含めて、営業経費について説明します。

取引先との付き合いに使う経費は?

自社の商品を売り込む営業活動について考えてみましょう。まず、クライアントのオフィスに訪問して交渉する行為は公式な営業活動です。実際は、その公式な行為だけではなく、非公式な会合も不可欠です。昼食や夕食、または各種レクリエーションなどを共にして、自社に有利な契約の獲得を目指します。このとき飲食や遊興にかかる費用は、基本的に営業経費として認められます。また、その際に購入してクライアントに提供するお土産も同様です。時候の挨拶としてのお中元、お歳暮なども営業経費で計上できます。さらに、婚礼や不幸があったときのご祝儀や香典など冠婚葬祭関連費用についても、会社名義で支出する場合は「交際費」扱いが可能です。

自家用車で営業する際のガソリン代は?

営業活動のための移動に関する支出も、基本的には営業経費扱いです。例えば、電車やバスなどの公共交通機関やタクシーなどを利用した場合、「交通費」として営業経費に計上できます。ただし、経理処理上、使途の詳細を記録する必要があるため、支出の「日付」と「経路」がわかるものを提出しなければなりません。具体的には、交通費請求書に領収書やレシートのオリジナルを添付します。なお、交通系電子マネーを使用した場合については、自社の経理に確認してください。指示されたプロセスを守らないと、営業経費として承認されないこともあるので注意が必要です。自家用車を営業に使う際のガソリン代は営業経費として計上できます。ただし、問題はプライベートな利用と営業利用の線引きです。当然ですが、プライベートな利用分は営業経費として申請できません。とはいえ、正確に分けることは難しいので、走行距離や使用時間の記録をこまめにとる方法が一般的です。この点も、自社の経理に確認しておきましょう。

スーツ代は特定支出控除の対象

営業担当者のユニフォームは、ネクタイ着用の「スーツ」が基本です。夏季の「クールビズ」ではネクタイが要らないこともありますが、いずれにせよスーツは必要です。そう考えると、ユニフォームとしてのスーツは営業経費に当たりそうなものです。しかしながら、スーツやネクタイ、また身だしなみにかかる費用は、営業活動に必要なものであっても基本的に自己負担となっています。営業経費では処理できなくても、給与所得者であれば確定申告の際にスーツ代が特定支出控除の対象となる可能性はあります。「特定支出控除」とは、勤務に必要な経費と認められる支出については所得税控除の対象となる制度です。どこまでを経費と認めるかについては、厳しい条件が付けられています。申告の際に税務署の相談窓口などで確認してみるとよいでしょう。

営業の経費が自腹になるケースに注意

経費で落とせるかどうかは、営業職に限らず、組織に属して働く人達の共通した関心事でしょう。特に営業の仕事では、内勤と比べて営業活動に絡むさまざまな出費が多いものです。実際のところ、経費かどうか判別が難しいグレーゾーンもあります。そうなると、自己負担になるケースも少なくないのです。また、営業経費として認められる支出であっても、一般的には上限額が設けられていて、それを超えると自己負担となります。さらに、自己責任の範囲ともいえますが、経費の申告があまりにも遅くなった場合や、領収証を紛失してしまった場合なども、経費として落とせないのが普通です。営業経費については、普段から経理と十分なコミュニケーションを取っておきましょう。経費について適切に管理できる能力も、営業の職能の重要な部分といえるでしょう。