営業職にとって、クレームと営業活動は背中合わせの存在です。たとえ自分のミスでなくても、お客様にとっては営業担当者イコールその会社になるため、矢面に立って対処する必要があります。しかも、対応を間違うと取り返しのつかない事態になる危険性もあるので、責任は重大です。しかし、正しい対策をとれればお客様からの信頼を得ることにもつながります。そこで、営業におけるクレームの対策について、さまざまな事例を含めて詳しく解説していきます。

営業マンへのクレームは必ずあるもの

営業職に就いていると多くのお客様と出会うため、自身の営業手法を苦手とするお客様に出会ってしまう確率も高くなります。そのなかには、ひどいクレームに発展したり、クレーマーに出くわしてしてしまったりする場合もでてきます。そもそも、世の中には波長が合わない人はある程度の確率で存在するため、多くの人と合う営業職の場合、クレームはつきものだと考えるほうが無難です。
ただし、だからといって放置して良いものではありません。なぜなら、クレームにはお客様から信頼を得るチャンスにつながるものが隠されているからです。クレームには理不尽なものだけでなく、理由のあるものもたくさんあります。そのクレームの理由がわかれば改善の余地がありますが、わからなければ放置されます。不満をもつお客様すべてがクレームを口にするわけではないので、表にでない不満が膨らんでいくことも考えられるのです。クレーム対応はそのようなお客様からも信頼を得るチャンスを秘めているといえます。

どんなクレームがあるものなの?

クレーム対応をするには、知識や情報が必要です。そのために、クレームにはどのようなものがあるのかを知っておくことも大切です。しかも、大きな事件に発展してしまったクレームについては、なぜそのような事態になったのかを知っておくといざというときに役立ちます。
今でもクレーム対応の教訓となっているものの一つに、1998年に世間をにぎわせた「東芝クレーマー事件」があります。この事件は、電話応対のときに録音された東芝渉外管理室の担当者の不用意な失言がインターネットで公開され、それが報道されたことで東芝不買運動へ発展したものです。最終的に、副社長がホテルで直接本人に謝罪するまでに追い込まれました。
この事件よりもっと恐ろしい結末を迎えたものに「吉野家クレーム殺人事件」があります。あまりにも理不尽なクレームを繰り返すお客様を、元店長が刺殺してしまった事件です。この事件は、裁判長の言葉からも、対処法が他にあったことがうかがえます。どちらもクレーム対応の大切さを物語っている事件だといえます。

営業マンがクレーム対応をするときのポイント

クレーム対応は、一つ間違うと取り返しのつかない事態になりかねません。そのような間違った対応をしないために押さえておくべきポイントがいくつかあります。その一つが、嘘をつかないことです。クレームを受けると、ついその場しのぎで事実と異なることを言ってしまうことがあります。そして、その嘘を隠すためにさらに嘘をつくことになり、最終的にごまかしきれずに取り返しのつかない結果を招くことに。だからこそ、事実のみで対応することが大切なのです。そして、それは自分の非を認めることにもつながります。たとえば、自分に非があることが事実であれば、その事実の部分については謝罪し、非がない部分はその旨、説明することで理解してもらうという対応ができます。
続いて、クレームを受ける際に注意しなくてはならないことが、相手が感情的になっている場合、否定や反論をしないことです。怒りが収まるまでは、一時的に肯定しながら話を聞き、冷静になるのを待ちます。そうすることで、相手がヒートアップすることを避けることができ、冷静な話し合いがしやすくなるのです。さらに、相手の想定を超えるお詫びの行動も効果的な方法といえます。たとえば、電話でのクレーム後、遠方であってもすぐに会いに行くといった方法の場合、驚きとともに誠意を感じてもらえる確率が高くなります。ただし、いずれも形だけでの謝罪では見抜かれてしまいます。謝罪するときは、本気で申し訳ないという気持ちが大切なのです。

対応を徹底して信頼の獲得に繋げよう

クレームには言いがかりのようなものもありますが、根拠のあるものも少なくはありません。その根拠を活かすか活かさないかは、クレームの対応にかかっています。しっかりと対応すれば、お客様からの信頼を得ることができるメリットにつながりますが、対応を間違うと取り返しのつかない事態を招く可能性もあります。クレームをチャンスに変えるためにも、きちんとした対策をとっておくことが大切です。