営業職とインセンティブとは切っても切れない関係にあります。歩合制や出来高払い制として、営業職には古くからインセンティブが導入されていました。しかし、その正確な言葉の意味や、その目的についてはっきりと理解していない人も多いのではないでしょうか。インセンティブについて誤った認識を持ったまま導入し、その結果十分な効果が発揮されていないケースもあるでしょう。インセンティブとは何か、ここではその基本から学んでいきます。

インセンティブは基本給以外に発生する報奨金

インセンティブとは「人の意欲を引き出すために、外部から与える刺激」のことです。インセンティブが広く浸透しているのは、プロスポーツの世界でしょう。プロ野球であれば投手の勝利数や投球回数などに応じて、出来高制の契約を結ぶことがあります。出来高の仕組みを設けて選手の意欲を引き出すことがインセンティブなのです。日本社会においても年功序列制が崩れ、成果報酬制を導入する企業が増えるにつれて、多くの企業がインセンティブを取り入れるようになりました。インセンティブで重要なのは一定のノルマや目標の設定と、それに応じた報酬の明確化です。営業職では歩合制や出来高払い制と呼ばれており、比較的古くから採用されてきた給与形態といえるでしょう。

インセンティブの払われ方は?

インセンティブには大きく分けて2種類の支払い方法が考えられます。1つ目は1件あたりの報酬を設定するものです。新規の契約を1件取るごとに定められた報酬が得られる仕組みです。報酬は売上金の数%と、売上金に応じた報酬になっていることもあります。2つ目はノルマや目標を設定し、達成率に応じた報酬を支払うものです。一月や四半期の営業目標の達成率に応じた報酬が支払われます。両者は相反するものではなく、共存することも可能です。1件ごとの契約報酬を設けつつ、一定の期間の売上ノルマ達成者には更に報酬を上乗せするといった仕組みも、営業職では珍しいことではありません。

インセンティブ制度を導入するメリットは?

インセンティブ制度を導入するメリットは明快です。社員にとっては自身の頑張り次第で、給与を上げることができます。一定の目標を達成すれば報酬が得られると思えばモチベーションアップにつながりますし、目標達成に向けた努力もしやすくなるでしょう。一方で、企業にとってはそうした社員の頑張りによって生じた成果が、制度導入の一番の目的でありメリットになります。どちらにとってもメリットの大きなインセンティブ制度ですが、注意点がないわけではありません。企業が設定する報酬が社員のモチベーションアップにつながらない場合、それは社員の意欲を引き出すことに失敗していることであり、インセンティブとは呼べません。

インセンティブを導入するなら事前に整備を

インセンティブ制度がうまく働かない理由として、次の2つが考えられます。1つ目は設定された金額や目標が高すぎて、とても達成できるようなものではないケースです。もう1つは、報酬がモチベーションアップに寄与しないほど低すぎる、もしくは見当はずれな場合になります。インセンティブ制度を導入するのであれば、事前にその内容を吟味しておくことが重要です。対象は誰にするか、どのようなルールを設けるか、インセンティブの内容、付与の方法について、全社員に周知し承認を得なければなりません。とりわけ対象者の選定には、細心の注意を払う必要があります。対象者にはモチベーションアップとなっても、非対象者のモチベーションを下げることになれば、適正な選定方法とはいえないでしょう。インセンティブには大きな効果が見込めますが、一歩間違えれば大きな反発も生まれます。事前の調査や話し合いによって、多くの社員が納得して働くことができる仕組みを作り上げることが大切です。